グリシンはアミノ酸の一種であり、ヘム合成に関与するポルフィリンや細胞核の基となるプリン体など、重要な物質の材料となるものである。また胆汁酸と結びつき脂肪吸収をうながす、睡眠を良質なものにする効果もある。良質な睡眠は、食欲を抑えるホルモンの分泌量を増やすため、過食が原因の肥満の防止につなげられる。
さらにグリシンは、統合失調症、AIS、下腿潰瘍などの病気に対しても効果が期待できる。ただし適量を守り副作用に注意する、悪化回避のため統合失調症薬との併用を避けることが大切である。
グリシンは、人体に重要な物質の材料となるアミノ酸
グリシンはタンパク質の構成成分であるアミノ酸の一種であり、グリココルやアミノ酢酸の別名もある。
血液のヘム合成に関与するポルフィリン、細胞核の基となるプリン体、筋肉の貯蔵エネルギーになるクレアチン、毒作用をもつグルタチオンなど、人体にとって重要な物質の材料となるものである。
睡眠を良質にし、食欲抑制のホルモン分泌を盛んにする
また胆汁酸と結びつき抱合胆汁酸となることで、脂肪吸収をうながす働きをする。
さらには、睡眠のリズム安定や熟睡をもたらすなど、睡眠の質を向上させる効果もある。
睡眠の質が向上すると、食欲を抑制するホルモン・レプチンの分泌が盛んになるため、暴飲暴食など過食を原因とする肥満の防止につなげることができる。グリシンの睡眠の質向上効果を売りにした商品も多く、代表的なものには、株式会社ファインのグリシン・プレミアムという粉末サプリメントが挙げられる。
睡眠の質向上の効果を示す実験内容は、以下の通りである。
睡眠の質向上の有効性を調べる実験
不眠症状のある者171名に、グリシンを1日3g、4週間摂取させる実験において、睡眠満足度の上昇、入眠状況の改善、睡眠時間の増加、日中の眠気・認知機能の改善の成果が得られている。
脂肪燃焼を助け、ダイエットに効果的な物質アミノ酸についての知識です。アミノ酸と一口にいっても20もの種類があり、フェニルアラニンなどの必須アミノ酸とグリシンなどの非必須アミノ酸に大別される…等々。よりダイエット効果が高まるアミノ酸の摂り方も紹介。
起きている時間が長い、つまり睡眠時間が短いほうが、より多くのカロリーを消費できそうなイメージですよね。しかし実は、睡眠不足は食欲を抑えてくれるホルモンを減少させるため、ダイエットの成功率を下げてしまうんです!他にも、睡眠不足がダイエットを不利にしてしまう理由は色々とあるので要チェック。
コルチゾール、成長ホルモン、レプチン、グレリン…。この4つは全て、睡眠と深い関わりをもつホルモンです。これらが睡眠とどう関係しているのか、さらにダイエットにどう結びつくのかを詳しく解説。
統合失調症、AIS、虚血性脳卒中に有効な可能性あり
グリシンには、統合失調症、急性虚血性脳卒中(AIS)、下腿潰瘍への薬理効果も期待されている。
それぞれの疾病に有効な可能性を示す実験の内容は、以下の通りである。
統合失調症への有効性を調べる実験
統合失調症で入院している者11名に、抗精神病薬と共にグリシンを1日0.8g/kg、6週間継続摂取させる実験では、意欲低下、抑うつ、認知症の症状改善の結果が報告されている。
ただし症状改善がみられなかった実験結果も多く報告されているため、グリシンの統合失調症への有効性は研究段階にあると言える。
急性虚血性脳卒中(AIS)への有効性を調べる実験
急性虚血性脳卒中(AIS)にかかっている者212名を、グリシンを1日1g摂取させるグループと、1日1~2g摂取させるグループとに分ける実験では、前グループに脳卒中重症度や機能的評価の改善、後グループにNMDA型受容体の抗体力価の正常化、脳内のギャバ濃度上昇、酸化ストレスマーカーの減少、発症30日後の生存率上昇が認められている。
下腿潰瘍への有効性を調べる実験
グリシン、システイン、トレニン配合のクリームを下腿潰瘍の患部に塗った結果、痛みの緩和とわずかな症状改善が認められている。
副作用や、統合失調症の治療薬との併用には注意を
グリシンを含む食品を、通常に食事で摂るならば健康を害す心配はない。
しかし確率は低いが、吐き気、嘔吐、胃の不快感、鎮静、軟便などの副作用が表れることもあるため、これらの症状がみられたらすぐに摂取を止めるべきである。摂取を止めれば、すぐに回復できる。
統合失調症の治療薬であるクロザピンを服用中の場合は、グリシンを摂取してはならない。
理由は、統合失調症の症状が重くなる可能性があるためである。