チロシンは動物性タンパク質に多く含まれ、体内ではフェニルアラニンから作られるアミノ酸である。ノルアドレナリンなど脳内ホルモンの材料になる物質であり、摂取すると脳が覚醒しモチベーションアップの効果を得られるとされる。ただし大量摂取や、甲状腺機能疾患のある者の摂取は、副作用リスクがあるので注意すべきである。
チロシンは、動物性タンパク質に多いアミノ酸の一種
チロシンはアミノ酸の一種であり、乳製品など特に動物性タンパク質に多く含まれている。
動物の体内においては、フェニルアラニンから作り出される特徴がある。フェニルアラニンは必須アミノ酸
であるため、チロシン産生のためには、食事などで外から意識的に摂取する必要がある。
脳が覚醒し、モチベーションアップの効果を得られる
チロシンは、脳内ホルモン(神経伝達物質)のノルアドレナリンやドーパミンの材料になる重要な物質である。
ノルアドレナリンやドーパミンは、平たくいうと「やる気を高める」物質であるため、チロシンを摂取することで脳が覚醒しモチベーションアップの効果を得ることができると言われている。
徹夜作業で睡眠不足の状態にある者に、チロシン150mg/kgを口から摂取させる実験では、覚醒レベル向上の結果を得られている。ナルコレプシー(日中にところかまわず強い睡魔に襲われる睡眠障害)に対しても、わずかではあるが覚醒改善の効果が認められている。
チロシンは、フェニルケトン尿症の治療にも役立つ
チロシンは、フェニルケトン尿症(フェニルアラニン代謝機能に異常のある遺伝病)の治療にも役立つ。
実際、フェニルケトン尿症の罹患者を対象としたチロシン配合のサプリメントが存在する。
またフェニルケトン尿症の患者には、チロシン6g/タンパク質100 gを摂取することが奨められている。
大量摂取はNG、甲状腺機能疾患がある者も要注意
食品中に含まれるチロシンを、通常の食事で体に取り入れるぶんには危険性はない。
ただしチロシンの副作用として、吐き気、頭痛、胸のむかつき、関節痛などの症状が報告されているため、チロシンのサプリメントを一度に大量に飲むといった摂取の仕方は控えるべきである。
甲状腺機能疾患にかかっている者も、注意が必要である。チロシンは、甲状腺ホルモンの材料にもなる物質だからである。
甲状腺機能亢進症(甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気)の者が、チロシンサプリを摂取すると、過剰分泌の症状に拍車がかかる恐れがある。
また甲状腺機能低下症(甲状腺ホルモンの分泌が不足する病気)で、甲状腺ホルモン剤を服用中の場合は、チロシンの摂取により薬の効能が強化される恐れがあるため、医師の指示のもと利用すべきである。