必須脂肪酸が豊富な植物油と青魚
必須脂肪酸は体内で作ることのできない重要な栄養素である。
必須脂肪酸は健康維持に欠かせない脂肪酸であり、体内で作ることができないために食べ物から摂取する必要がある。
以前は生命維持に不可欠な栄養素として「ビタミンF」と呼ばれていたが、必要量が数グラム単位と一般的なビタミンよりも多いため微量栄養素としてのビタミンの仲間からは外されている。
必須脂肪酸にはエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)、α‒リノレン酸、リノール酸などの多価不飽和脂肪酸がある。
ダイエットと必須脂肪酸
必須脂肪酸は、植物油や魚の油などの食品で摂取できる。また、必須脂肪酸のサプリメントも多く販売されているので手軽に摂取することが可能になってきている。
ダイエット中には脂質の摂取を控える人が多いが、必須脂肪酸は脂肪燃焼を促進する働きや中性脂肪を減らす働きを持つものもあり、ダイエットに有効な脂肪である。
必須脂肪酸の1日の必要量
必須脂肪酸は化学構造の特長によってn‒6系脂肪酸(ω-6脂肪酸ともいう)と n‒3系脂肪酸(ω-3脂肪酸ともいう)に分けられる。これらは体内で合成できず、不足すると皮膚炎などが発症することが知られており、十分な量を食事から摂取する必要がある。
厚生労働省が策定した「日本人の食事摂取基準2010年版」で定められている1日に摂取すべき必須脂肪酸の目標量と目安量を以下に示す。
n‒6系脂肪酸の必要量
n‒6系脂肪酸には、リノール酸、γリノレン酸、アラキドン酸などがあり、日本人は n‒6系脂肪酸の 98% をリノール酸から摂取しているとされている。
リノール酸は植物油に多く含まれており、大豆油、コーン油、紅花油(サフラワー油)などの調理油から摂取することができる。
次表はn-6系脂肪酸の1日当たりの必要量である。目安量は必須脂肪酸としての最低必要量(単位はグラム)を示し、目標量は総エネルギー摂取量に占める割合(単位は%E)を示している。
すなわち、18~29歳女性の場合では9g以上10%E未満の範囲で摂取することが推奨されている。
n‒6系脂肪酸の1日当たり目標量と目安量
性別 |
男性 |
女性 |
年齢 |
目安量(g/日) |
目標量(%E) |
目安量(g/日) |
目標量(%E) |
0~5ヶ月 |
4 g |
設定なし |
4 g |
設定なし |
6~11ヶ月 |
5 g |
設定なし |
5 g |
設定なし |
1~2 才 |
5 g |
設定なし |
5 g |
設定なし |
3~5 才 |
7 g |
設定なし |
6 g |
設定なし |
6~7 才 |
8 g |
設定なし |
7 g |
設定なし |
8~9 才 |
9 g |
設定なし |
8 g |
設定なし |
10~11 才 |
10 g |
設定なし |
9 g |
設定なし |
12~14 才 |
11 g |
設定なし |
10 g |
設定なし |
15~17 才 |
13 g |
設定なし |
11 g |
設定なし |
18~29 才 |
11 g |
10%未満 |
9 g |
10%未満 |
30~49 才 |
10 g |
10%未満 |
9 g |
10%未満 |
50~69 才 |
10 g |
10%未満 |
8 g |
10%未満 |
70 才以上 |
8 g |
10%未満 |
7 g |
10%未満 |
妊婦の付加量 |
|
+1 g |
設定なし |
授乳婦の付加量 |
+0 g |
設定なし |
厚労省「日本人の食事摂取基準」(2010年版)より
n‒6系脂肪酸を多く含む食品の例
n‒6系脂肪酸を多く含む食品は以下のような植物油である。
n‒3系脂肪酸の必要量
n‒3系脂肪酸には、えごま油など食用調理油に多く含まれるα‒リノレン酸や魚介類に豊富なドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸などがある。
n‒3系脂肪酸は不足すると皮膚炎などが発症するため、必要量を表す目安量が設定されている。
また、n‒3系脂肪酸は血中中性脂肪値の低下などいろいろな生理作用を発現して生活習慣病の予防効果を示すため、18歳以上に対しては摂取すべき目標量が設定されている。
n‒3系脂肪酸の目安量、目標量を次表に示す。
なお、18 歳以上の日本人ではこれらn‒3系脂肪酸の必要量のうち、DHAとEPAを合計で1g/日以上摂取することが望ましいとされている。
n‒3系脂肪酸の1日当たり目標量と目安量(g/日)
性別 |
男性 |
女性 |
年齢 |
目安量 |
目標量 |
目安量 |
目標量 |
0~5ヶ月 |
0.9 g |
設定なし |
0.9 g |
設定なし |
6~11ヶ月 |
0.9 g |
設定なし |
0.9 g |
設定なし |
1~2 才 |
0.9 g |
設定なし |
0.9 g |
設定なし |
3~5 才 |
1.2 g |
設定なし |
1.2 g |
設定なし |
6~7 才 |
1.6 g |
設定なし |
1.3 g |
設定なし |
8~9 才 |
1.7 g |
設定なし |
1.5 g |
設定なし |
10~11 才 |
1.8 g |
設定なし |
1.7 g |
設定なし |
12~14 才 |
2.1 g |
設定なし |
2.1 g |
設定なし |
15~17 才 |
2.5 g |
設定なし |
2.1 g |
設定なし |
18~29 才 |
設定なし |
2.1g以上 |
設定なし |
1.8g以上 |
30~49 才 |
設定なし |
2.2g以上 |
設定なし |
1.8g以上 |
50~69 才 |
設定なし |
2.4g以上 |
設定なし |
2.1g以上 |
70 才以上 |
設定なし |
2.2g以上 |
設定なし |
1.8g以上 |
妊婦 |
|
1.9 g |
設定なし |
授乳婦 |
1.7 g |
設定なし |
厚労省「日本人の食事摂取基準」(2010年版)より
n‒3系脂肪酸を多く含む食品の例
n‒3系脂肪酸を多く含む食品は以下のような青魚(イワシ、ニシン、サバ)や魚油、植物油などである。
n-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸のバランス
「第6次改定日本人の栄養所要量」では、n-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸の摂取割合を4:1程度にすることを推奨している。
しかし、食用油の多くがn-6系脂肪酸を豊富に含んでいるが、n-3系脂肪酸の方はあまり多く含んでいない。そのため、日本人のn-3系脂肪酸の摂取量は少ない傾向にある。