トランス脂肪酸
ファットスプレッドやマーガリン、ショートニングなどの食品には動物性油脂に比べ健康的なはずの植物性脂を加工した油に含まれるトランス酸(トランス酸)が話題になっている。
トランス脂肪酸を多く摂取すると悪玉コレステロールを増やし善玉コレステロールを減らすという結果があり、心筋梗塞などの心臓病のリスクを上げてしまう為といわれている。
アメリカをはじめとする世界各国では、このトランス脂肪酸に対し様々な規制を実行し、レストランなどの飲食店において「一食当たり0.5g以下にせよと」の使用制限や販売される加工食品に対しても「トランス酸の表示を義務付ける」などを行っている。
トランス脂肪酸(TFA)とは
栄養表示に関する国際的な基準を決めているコーデックス委員会ではトランス酸(TFA)を以下のように定義している。
トランス脂肪酸の定義
“1 つ以上のメチレン基で隔てられたトランス型の非共役炭素-炭素二重結合を持つ単価不飽和脂肪酸及び多価不飽和脂肪酸の全ての幾何異性体”
“トランス型の二重結合であってもそれが共役二重結合のみとなっている脂肪酸(共役脂肪酸)については非共役トランス脂肪酸以外の脂肪酸と同様の働きをしていることからトランス脂肪酸として含めない”
トランス脂肪酸自体まだ未解明な部分も多く、新たな科学的根拠が見つかった場合、栄養表示において再検討を行うとのこと。
シス型とトランス型幾何異性体
トランス脂肪酸は図で示したような形で二重結合しているものであり、身近な食品に多く含まれている。
シス型だった二重結合が加熱処理等でトランス型のトランス型幾何異性体に変わる。
トランス脂肪酸とは一種類の脂肪酸を表す言葉ではなく、トランス型の二重結合で結合した不飽和脂肪酸を総称している。
日本人のトランス脂肪酸の摂取量
日本人が現在摂取していると推測されるトランス脂肪酸の量を国民健康・栄養調査報告をもとに計算すると、平均的な摂取量は「0.92~0.96g/日」。
総エネルギー摂取量換算でいうと「約0.4~0.5%」程度になる。
WHO/FAO合同専門家会合で公表された資料である
「トランス脂肪酸は総エネルギー摂取量の1%未満」を基に日本人でトランス脂肪酸の目標量を計算すると「2g未満/日」になる。
つまり現在の日本人は、平均的に見ると一応目標量はクリアしていることになる。
農林水産省の消費・安全局消費・安全政策課が制作しているトランス脂肪酸に関する情報ページ。
消費者向けにトランス脂肪酸を解説している。
トランス脂肪酸の摂取を抑えるための方法が紹介されており生活の中における脂肪酸対策ができる。
トランス脂肪酸が含まれる食品
トランス脂肪酸は例えば以下のような食品に含まれていることが多い。
(もちろん食品の種類により含有率や含有の有無は異なる)
トランス脂肪酸食品
マーガリン |
ファットスプレッド |
ショートニング |
ポップコーン |
牛肉 |
生クリーム |
クリーム |
コーヒークリーム |
プロセスチーズ |
ナチュラルチーズ |
バター |
食用植物油 |
食用調合油 |
ヘット |
ラード |
イーストドーナツ |
クロワッサン |
菓子パイ |
ケーキ類 |
ビスケット |
クッキー |
スナック菓子 |
マヨネーズ |
カレール・ハヤシルウ |
(太文字=比較的多い場合がある – 食品に含まれるトランス脂肪酸の評価基礎資料調査報告書)
これらは単純にその食品だけで見たトランス脂肪酸の含有量が多い食品である。
頻度として口にする機会が多くなる食品から摂取量を割り出した場合、以下の順で多くなると調査されている。
トランス脂肪酸を摂取する量が多くなる食品BEST5
植物性油脂 |
0.1144(g/day) |
牛乳 |
0.0922(g/day) |
マーガリン |
0.0840(g/day) |
牛肉 |
0.0782(g/day) |
パン類 |
0.0546(g/day) |
トランス脂肪酸が問題であると話題になっている「マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド」に注意していたとしても、問題の食品から摂取する量よりも、普段から食べている食品から摂取する量の方が多くなるのである。
日本ではまだトランス脂肪酸対策は確実ではない
マーガリンやショートニング、ファットスプレッドなどトランス脂肪酸が含まれている食品が色々と取りざたされているが、これがなぜ問題かというと、本来健康に気遣って植物性の油を摂取したはずなのに、トランス脂肪酸を摂取してしまうという問題だけである。
上の項で示したとおり、例えば、よく食べる牛乳や牛肉、お菓子などこのような一般的な食品にも天然トランス脂肪酸は含まれている。
普通に生活している人はマーガリンなどからのトランス脂肪酸摂取量よりも、その他食品からのトランス脂肪酸の方が摂取量は多くなる。
またトランス脂肪酸の中には、食べ物から摂取すべきと指定された必須脂肪酸が含まれている。
つまり、トランス脂肪酸を全て抑制すると、必須脂肪酸も摂れず、また一般的な食事が出来ないことになってしまう。
また天然のトランス脂肪酸が問題なのか人工的に精製されるトランス脂肪酸が問題なのか、どのトランス脂肪酸がどのくらい悪いという根拠は乏しいため、トランス脂肪酸の量を気にするよりも脂肪酸全体の摂取量に気を使うべきと農林水産省では推奨している。
特定の植物油だけが問題ではない
数年前に特定の植物油に対しトランス脂肪酸に発がん性物質が含まれると話題になっていたが、植物油からのトランス脂肪酸を防ごうとするならば加熱調理は一切できず、ほぼ不可能に近い。
トランス脂肪酸は一つの脂肪酸を示すわけではなく、大部分の脂肪酸を示しており、大抵の植物油に含まれている。(加熱調理等による発生を含む)
どのトランス脂肪酸がどの程度問題であるか明確ではない以上、農林水産省が推奨するとおり全体的な脂肪酸摂取量を減らすのが望ましいと考えられる。
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