トレオニン(スレオニン)は、人の体内で合成できない必須アミノ酸である。米や小麦など穀物類に含まれるが量が少なく消化吸収率が悪いため、魚類、肉類、豆類など他の食品群からも摂取する必要がある。化学合成されたDL-体やL体のトレオニンは、調味料や添加物として、穀物の栄養強化をはじめ多くのことに用いられている。
トレオニンは薬効を有する物質でもあり、具体的には筋肉が過度に緊張する脊髄痙縮の症状を和らげる力がある。ただしALSの者が摂取すると、肺機能が低下する恐れがあるため該当する者は注意したい。
トレオニンは、スレオニンとも呼ばれる必須アミノ酸の1つ
トレオニンはスレオニンともいい、人の体内では合成が不可能な必須アミノ酸の1つである。
米や小麦など穀物類に存在しているが、含有量が少なく消化吸収率が低いという難点があるので、穀物以外の食品からも摂取して欠乏を防ぐ必要がある。
トレオニンを多く含有している食品には、魚類ではカツオ、肉類では鶏肉、豆類ではレンズ豆などが挙げられる。
DL-体やL-体のトレオニンは、調味料や添加物として用いられている
化学合成されたDL-体のDL-トレオニンやL-体のL-トレオニンは、調味料や食品添加物として用いられている。DL-トレオニンやL-トレオニンは、白い結晶あるいは白い粉末の姿であり、弱い甘味をもつのが特徴である。
主な用途は、精白米や動物の飼料など、トレオニン含有量が少ない穀物類の栄養強化である。
この他にも、栄養ドリンク、健康食品、点滴の輸液(アミノ酸輸液)の成分など、多くのことに利用されている。
弱力だが、脊髄痙縮の症状をやわらげる鎮痙効果をもつ
トレオニンは、疾病に対し薬効を発揮する物質でもあり、具体的には脊髄痙縮の症状に有効である。
脊髄痙縮で足の筋肉の緊張がある患者に、L-トレオニンを1日6gの量を経口摂取させる臨床試験において、作用は弱いものの、明らかな痙縮緩和がみとめられたという報告がある。
過剰摂取しないなど正しく利用すれば、副作用の発現率は低い
トレオニンの経口摂取で、胃腸障害、下痢、便秘、おなら、鼻汁、皮膚の発疹の副作用が表れた事例がある。
ただし過剰量の摂取を避けるなど正しく利用すれば、副作用の発現率はきわめて低い。
通常の食生活で過剰摂取に至ることはまずないが、サプリメントの利用は過剰摂取におちいりやすいので注意すべきである。
ALS患者は、肺活量低下など肺機能低下のリスクがある
トレオニンは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)にかかっている者の肺機能に、悪影響を及ぼす危険性がある。
1日4gのトレオニン摂取が原因で、努力肺活量が低下したという試験結果が報告されている。
以上からトレオニンは、適切利用を守ること、ALS患者は十分に注意することが大切である。