骨粗鬆症とは、骨密度が低下し骨折しやすくなる病気である。代表的な原因はカルシウム不足であるが、カルシウム不足の他にも運動不足や過度のダイエットなどが原因要素となる。原因要素をみると、女性は骨粗鬆症を発病するリスクが高いと言えるので、特に予防に力を入れるべきである。
骨粗鬆症の原因は、カルシウム不足だけに限っていない
骨粗鬆症とは、骨密度が著しく低下する骨格疾患であり、「骨粗しょう症」と表記されることもある。
骨粗しょう症にかかると骨折しやすくなり、ひどい場合は寝たきり状態となってしまう。
よく知られている代表的な原因は、カルシウムの摂取不足であるが、原因要素はそれだけに限っていない。
カルシウム不足に、以下のような多様な要素がからみ合うことで、骨粗しょう症の発病にいたるのである。
骨粗しょう症の原因要素
回避困難な要素 |
回避可能な要素 |
加齢
女性であること
白色人種
家族歴がある
初経年齢が高い
閉経が早い
骨折歴がある |
以下の栄養素の不足
・カルシウム
・ビタミンD
・ビタミンK |
以下の栄養素の過剰摂取
・リン
・塩分 |
以下の生活習慣
・運動不足
・過度のダイエット
・日光に当たらない
・タバコの過剰摂取
・アルコールの過剰摂取
・コーヒーの過剰摂取 |
原因要素は、自力での回避が困難なものと、自力での回避が可能なものに大別される。
自力での回避困難なもの、つまり先天的に高い骨粗しょう症リスクをもっている場合(女性など)は、回避可能な要素を知り、特に予防に力を入れることが大切と言える。
カルシウム不足が、骨密度を低下させるメカニズム
私たち人間の体内に存在しているカルシウムの量は、体重の1~2%である。
そのうち大半は骨や歯のエナメル質に存在しており、残りは血液や筋肉、細胞などの組織に存在している。
血液にあるカルシウムは、血液の凝固や筋肉の収縮、神経伝達など、さまざまな重要な生理作用に用いられている。一方骨では、骨芽細胞による新しい骨の形成と、破骨細胞による古い骨の破壊(吸収)が、常時行われている。
この働きにより、血液中のカルシウム濃度の安定を保っているのである。
しかし長らくカルシウムの摂取不足が続くと、血中カルシウム濃度の安定は崩れ、骨の形成よりも骨の破壊活動の方が盛んになってしまう。すると、カルシウムを主成分とする骨の密度が低下し、折れやすい弱い骨になってしまうのである。
きちんと体に吸収させるには、ビタミンDなど他の栄養素も必要
骨粗しょう症を予防するためには、日々の食事で、カルシウムの意識的な摂取を心掛けなければならない。
ただしきちんと体に吸収させるためには、カルシウムのみでは不十分であるため、ビタミンD、マグネシウム
、タンパク質など他の栄養素も共に摂取する必要がある。
カルシウムの体内吸収に欠かせない「ビタミンD」が豊富な食品
カルシウムの効率的な体内吸収に、もっとも重要な栄養素といえるのがビタミンD。そのビタミンDを豊富に含んでいる食品一覧や、骨粗しょう症のほかビタミンDの摂取不足が原因で起こり得る健康上のトラブルなどを紹介。
カルシウムの効率的な体内吸収に不可欠な栄養素、「ビタミンD」を豊富に含んでいる食品の一覧です。骨粗しょう症など、ビタミンD不足が招く健康上のトラブルなどについても紹介。
成人男性・女性における一日の摂取目安量
■ カルシウム……男性600mg、女性600mg
■ ビタミンD……男性5μg、女性5μg
■ マグネシウム……男性370mg、女性280mg
■ タンパク質……男性60g、女性50g
各栄養素を多く含む食品と、それぞれの含有量(食品100g当たり)
カルシウム(mg) |
ビタミンD(μg) |
マグネシウム
(mg) |
タンパク質(g) |
桜エビ |
690 |
すじこ |
47 |
なまこ |
160 |
焼たらこ |
28.3 |
プロセスチーズ |
630 |
いくら |
44 |
油揚げ |
130 |
焼あじ |
27.5 |
パセリ |
290 |
紅さけ |
33 |
ゆで大豆 |
110 |
ほんまぐろ赤身 |
26.4 |
大根(葉) |
220 |
スモークサーモン |
28 |
あさり |
110 |
春かつお |
25.8 |
牛乳(低脂肪) |
130 |
にしん |
22 |
納豆 |
100 |
焼いわし |
25.8 |
ヨーグルト(全脂無糖) |
120 |
ひらめ |
18 |
がんもどき |
98 |
生ハム |
25.7 |
さらに先でも述べたように、過度のダイエット、運動不足、嗜好品の過剰摂取といった問題ある生活習慣を、改める努力も必要である。
もし骨粗しょう症になってしまった場合は、医師の指示による専門治療を受けなければならない。
骨粗しょう症の治療の中心となるのは薬物療法であり、治療薬には骨吸収抑制薬や、骨形成を促進する作用をもつテリパラチドなどの種類がある。