マロニエは、主にヨーロッパ南東部に生る落葉性の樹木であり、和名をセイヨウトチノキという。栗に酷似した実にはエスクリンという有毒成分が含まれるため、生を食すのは禁忌とされる。樹皮・葉・花・種など他の部位も同じくエスクリンが含まれるため、やはり生を食してはならない。しかしマロニエの実から抽出したエキスには、静脈瘤を緩和させる効能があるため、安全な利用法を守ることが大切である。
マロニエは、主にヨーロッパ南東部に生息する落葉樹
マロニエは、バルカン半島など、主にヨーロッパ南東部に生息する落葉性の大型樹木である。
和名をセイヨウトチノキあるいはトチノキというが、フランス語名のマロニエと呼ばれることが圧倒的に多い。
マロニエの高さは約25mにもなり、幹の太さは1m以上になるものも珍しくない。葉も巨大である。
実は栗に酷似しているが、生を食すのは禁忌である
マロニエは美しいピンク色の花のほか、栗に酷似した実が印象的だが、生の実を食すのは禁忌とされている。
理由は、エスクリンという有毒な成分が含まれているためである。
マロニエの樹皮・葉・花・種の部位も、実と同様にエスクリンが含まれているため、生のものを食してはいけない。もしこれらを大量に食べてしまった場合、命を落とす危険性が高い。
有毒なエスクリンを除去した実は、医薬品に利用できる
エスクリンの実は有毒である反面、薬用効果ももつため、医薬品として利用することができる。
樹皮・葉・花・種も薬効の可能性が言われているが、日本で医薬品として用いることが認められているのは実のみである。ドイツのコミッションE(ハーブの安全性や効能を評価する委員会)でも、実に限り薬効あるハーブと認めている。
静脈を丈夫にし、静脈瘤の症状を和らげる効能をもつ
マロニエの実は、静脈を丈夫にすることで、静脈瘤の症状を和らげる効能をもつ。
人を対象とした実験において、マロニエの実から抽出したマロニエエキスが、慢性静脈不全の治癒に役立った結果が報告されていることから、静脈疾患に対し明らかな有効性があるとみてよい。
血糖降下薬との併用や、消化管炎症がある者は危険
新芽・葉・花・種を摂取すると、筋肉のけいれん、衰弱、瞳孔散大、嘔吐、下痢、抑うつ、麻痺、昏迷の中毒症状が表れることがある。また樹皮と種には血糖値を低下させたり、胃腸の炎症を引き起こしたりする危険性があるため、血糖降下薬を服用中の者や消化管炎症がある者は、摂取を避けるべきである。
さらに腎臓や肝臓に疾病のある者も、摂取してはならないとされている。
マロニエは毒性が強い植物であるため、安全に利用したければ、生のものを経口摂取することは避ける、疾病がある者は摂取を控える、有害なエスクリンを除去したエキスを用いることが大切である。